来てます 波動パワーです。

2022年10月19日

ヒーーーリーーン。不意に聞こえてきた音に、身も心も寝そべっていた僕は、吸い寄せられるように顔をあげた。ヒーーーリーーーーン。さっきよりも芯の通った音を奏でている友人の耳の横には、銀色の太い音叉のようなものが光っている。もう一方の手には、鉄琴なんかを叩きそうな玉状のスティックが。

これ、気持ちいいんすよ。脳に松果体っていう部位が歳をとると石のように硬くなってきて、それが認知症にもつながるらしいんですけど。こいつを叩いてでる音が528Hzでして、どうやらその周波数が砕いて柔らかくしてくれるんすよ。

ヒーーーリーーーーーン。なになに、それ貸して、どうやるの?あっれ?うまく鳴らないな。オ、オ、オオ、オオオ。両耳は勿論、額から鼻の穴、後頭部の延髄からもっぱら両肩のこっているところに向けて鳴らしまくった。悦に浸る僕を横目に、あからさまにひいている友人。

意気揚々と帰宅して、妻に報告。なんとアマゾンで買えるらしいって、目を細めていぶかしがる妻。ほらほら、アマゾンの評価もすこぶる高いよ。自分の瞳が輝きを帯びてきている。もう、黙って買ったりしないでね、と釘を刺されて数日。朝、目を覚まし思い返すたびに、あの音色が脳裏に蘇える。ああ、恍惚の笑みを浮かべながら、松果体をジンジン揺らしたい。

ごく最近、最寄りのスパに出向いた。露天風呂で一息ついていると、耳に覚えのある音が聞こえてくる。あれ、何だろう?と吸い寄せられるように近づいてみると、そこには水琴窟の札が立っていた。ヒリン・・・ ・・・ヒリーン・・・ ・・・。そうか水琴窟があったか。壺か、壺を買えばいいのか。風呂からあがったら、早速、妻に報告しようと、のぼせた頭を風にあてて整えながら、また恍惚の笑みを浮かべている。


無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう